次亜塩素酸ナトリウムの安全性と危険性

健康
次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物

次亜塩素酸ナトリウムの安全性と危険性

別記事で電解次亜水の生成器を利用したPOICウォーター風うがい水の紹介をしたが(くどいようだがお勧めはしていない)、電解次亜水に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの危険性や有害性について言及するコメントをいくつかいただいたので、食品衛生法で定める食品添加物としての基準と、次亜塩素酸ナトリウムのメーカーが公表している安全データシートの記載から、危険性の程度をチェックしてみた。
網羅性の観点でこれで十分かはわからないが、目についたのがこの2点。

結論を先に書くと、「食品添加物だし、薄めてうがいに使うくらいなら、まあ、大丈夫なんじゃない?」だ。(別記事のうがい水は皮膚等への刺激性が指摘される濃度の1/100程度。)

前置きしておくが、私は食品の専門家でも化学の専門家でも法令の専門家でもないので間違いがあるかもしれない。ほかに大事な調査対象を見落としているかもしれない。間違いは指摘していただけると大変ありがたい。

詳しくは後述するが、次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物に認められているし、水道水にも添加されるほどの安全なものである。実際このような商品が販売されている。

次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物

次亜塩素酸ナトリウムを危険だという人は、往々にしてこの事実を知らない。「次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物として認められていない」という固定フレーズを主張する人がいるが、デマである。

余談だが、この世で使われているものは、安全性が確認されたもの、危険性が確認されたもの、それ以外のものにざっくり3分類できる。
昨今流れる「次亜塩素酸ナトリウムは危険」の言説には一定数、「安全性が確認されていない」(それ以外のもの)を根拠に「危険だ」と主張しているものがある。
これは言い過ぎで、「ゼロリスク病の安全厨」だと思っている。
なぜなら、世の中で日常的に使われているものなどは、ほとんどが「安全性が確認されていないもの」だから。これらを危険だと疑い始めたらほとんどの社会活動や経済活動はストップしなければならなくなる。便利な生活もいったん先祖返りさせなければならなくなる。

食品添加物として認められているが、どの程度の安全性・危険性があるかは食品衛生法からはわからない。どんなものでも量が多すぎれば危険になることもある。確認された危険性がどの程度かを調べてみた。

食品衛生法

次亜塩素酸ナトリウムが食品添加物として認められているらしいのだが、有害物質だと聞くのでさぞ厳しい基準が設けられているのだろうと思い、法令を確認してみた。

食品衛生法

第十条
人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

なるほど。〇〇以外は基本ダメ、の、ポジティブリスト方式。
で「聴いて定める」使ってもいい例外の添加物は、施行規則に書いてあった。

食品衛生法施行規則

第十二条
法第十条の規定により人の健康を損なうおそれのない添加物を別表第一のとおりとする。

別表第一(第十二条関係)
 百七十六 次亜塩素酸ナトリウム(別名次亜塩素酸ソーダ)

施行規則別表第一の添加物リストは、厚労省では「指定添加物」と呼んでいるそうだ。
次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物として認められている。「健康を損なう恐れがない」、とお墨付き感すらある表現。

使用基準については、厚労省告示第370号第2に記載されている。

食品 添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号) 第2 添加物(平成29年11月30日現在)F 使用基準

次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムは、ごまに使用してはならない。

たったこれだけ。

別の情報によると、ゴマに使用してはならない理由は、漂泊して値段の高い白ゴマとして売る詐欺行為を防ぐためなんだとか。(真偽不明)

食品添加物の使用基準は「ごまに使用してはならない」だけ

食品添加物としての使用基準は上述のとおりで、次亜塩素酸ナトリウムは有害だと記されているわけでもないし、一日当たり摂取量上限が決められているわけでもない。

「次亜塩素酸水」の使用基準「次亜塩素酸水は、最終食品の完成前に除去しなければならない。」すらない。次亜塩素酸ナトリウムは、最終食品の完成前に除去する必要もないのだ。

前記事コメント欄で「残留しないことを条件に使用が認められている」と書いた。どこかで見た記憶があってこう書いたのだが、今回調べてみて、そういう記述は見えてこなかった。何かの勘違いだろうか。

参考までに、他に「大量調理施設衛生管理マニュアル」というものがあったが、これはどちらかというと、「次亜塩素酸ナトリウムなどを使って、しっかり殺菌しろよ」マニュアルのようだ。
使用量はこれ以下にしろではなく、最低限これくらい使って殺菌しろ的な。

参考:厚労省・食品添加物のページ

ただ、法令というのは調べつくしたつもりでも、「実はここにこんな規則がありまして」なんて、伏兵がたくさん隠れている。見落としている可能性は十分あるので、正確に知りたいなら専門家に聞くべきだろう。

安全データシート

「食品添加物として認められている」で終了だが、たくさん使えばなんらか有毒性はあるかもしれないの観点で危険性を調べてみた。

次亜塩素酸ナトリウムの情報を検索していると、次亜塩素酸ナトリウムの製造メーカーの出している「安全データシート」というものが目についた。以下はwikipediaから抜粋。

安全データシート

安全データシート(あんぜんデータシート、英: Safety Data Sheet、略称 SDS)とは、有害性のおそれがある化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡または、提供する際に、対象化学物質等の性状や取り扱いに関する情報を提供するための文書。
国際的には国際連合の化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)や ISO1104-1 で標準化されている。

だそうで。ぱっと見、人体への影響であれば、高濃度・大量摂取・接触による危険性の観点で記されているようだ。
どこのメーカーも同じようなことを書いているようなので、一つの例を引用。

次亜塩素酸ソーダ・日本ソーダ工業会

細かくは見ればわかるが、素人目で関係項目を抽出すると、

皮膚腐食性及び皮膚刺激性:
腐食性があり、皮膚、眼、粘膜を激しく刺激する。ミストを吸入すると気道粘膜を刺激し、しわがれ声、咽頭部の灼熱感、疼痛、激しい咳、肺浮腫を生ずる。ウサギおよびモルモットを用いた試験(FHSA法(ドレイズ試験相当))において、本物質の5-5.25%水溶液を適用した結果、いずれも「軽度の刺激性」がみられた。しかし、ウサギを用いた他の皮膚刺激性試験では、本物質の6.25%-12.5%水溶液を適用した結果、「重度の刺激性」がみられた5)6)ヒトの疫学データでは、pH10.5の本物質を5-5.25%水溶液として閉鎖適用した結果、「重度の刺激性」がみられた5)6)。EU-RAR(2007)では、「5%超で刺激性、10%超で腐食性であるという最新EU分類は、ヒト及び動物データの総合評価によって裏付けられている」と結論している。さらに、本物質は、EU CLP分類において「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。以上より区分1とした。

眼に対する重篤な損傷性又は刺激性:
ウサギを用いたドレイズ試験において、本物質の水溶液を適用した結果、1.6%水溶液では「軽度の刺激性」がみられたが、12.5%水溶液では「重度の刺激性」がみられた5)6)。また、別のウサギを用いたドレイズ試験において、本物質の50%溶液を適用した場合、洗浄しない場合の21日目のスコアは48/110(4分後に洗浄した場合のスコアは27/110、21日目のスコアは0/110)で「重度の刺激性」がみられた6)8)。ヒトの疫学データについては、5.25%溶液を眼に誤噴霧した結果について、「灼熱感と角膜に対してわずかな損傷を生じ、速やかな眼の洗浄で48時間以内に完全に回復した」との報告がある5)6)。さらに、本物質は皮膚腐食性物質であり、EU CLP分類において「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。以上より区分1とした。

呼吸器感作性又は皮膚感作性:
呼吸器感作性情報なし:皮膚感作性モルモットを用いた皮膚感作性試験3件の結果はいずれも陰性であり、HRIPT(ヒト連続パッチテスト)の2件の結果でもいずれも陰性であった。次亜塩素酸ナトリウムの広範囲にわたる用途から、感作性の可能性は実質的にない5)6)との記載がある。

生殖細胞変異原性(変異原性):
次亜塩素酸、塩素を投与した生殖発生毒性データがEU-RAR(2007)に記述されているが、次亜塩素酸ナトリウムのデータはなく分類できない。

発がん性:
IARCがグループ3に分類している。

生殖毒性:情報なし

特定標的臓器毒性、単回ばく露:
EU-RAR(2007)に、プールでばく露されたヒトで眼および上気道に刺激性を示したとの事例報告、およびエアロゾルを吸引ばく露したマウスの実験で気道刺激性が認められたとの記述がある。5)6)[区分3(気道刺激性)]

特定標的臓器毒性、反復ばく露:
ラットの飲水投与による3ヶ月間又は2年間の試験ではガイダンス値範囲を上回る用量(約200 mg/kg/day以上)で体重増加抑制など全身影響がみられたに過ぎない5)6)。マウスの2年間飲水投与試験では区分2のガイダンス値の範囲内の用量(58 mg/kg/day相当)で体重の低値がみられた5)6)が特定の臓器が不明である。

発がん性のIARCグループ3は、「ヒトに対する発がん性について分類できない。」で、要は「発癌性を示す証拠はない」ということだろう。

有害性は大したことない(感想は個人的なものです)

つまり、有意なポイントとしては、

  • 皮膚への刺激性:濃度5%超で刺激性、10%超で腐食性
  • 眼への刺激性:濃度5%程度で灼熱艦と角膜へのわずかな損傷
  • 200mg/kg/day以上の3カ月投与で体重増加抑制(ラット)
  • 50mg/kg/dayの2年間投与で体重の低下(マウス)

(ちなみに、私用うがい水の電解次亜水濃度は0.05%程度で、皮膚への刺激性を生じる濃度の100分の1以下でしかない。濃度の関係は文末に追記した)
こんなとこだろうか。次亜塩素酸ナトリウム濃度の目安としては、メーカーの公表値で確認できないが、ネット上の情報によるとキッチンハイターの原液が濃度5~6%程度だそうなので、キッチンハイターの原液を皮膚にかけたり、眼にかけたりすれば、刺激がきつくて角膜に傷がつく、そんなイメージだろうか。
影響は表面的な外傷レベルのもののみで、生物濃縮のような長期連用による蓄積などは記載が無い。構成する元素が軽いものばかりなのでそうなのだろう。

日用品として許可なく購入できるものとしては、比較的毒性が高いという位置づけか。
(硫酸などの「劇物」は販売者も役所に登録が必要だし、購入者は18歳以上で書類を提出しなければならない。そんなレベルのもんではない。)

この程度の毒性なら個人的には「大したことない」と思う。薄めて使ってみて、目やのどが痛いとか、ヒリヒリするなどの実感できる実害がなければ、問題ないのだろう。気づかぬうちに体を蝕むとかなさそう(だと思う)。

ただし、厳密にいえば「わからない」「確認できていない」ことが多いので、安全と言い切ることはできない。発癌性もないとは言えないわけだから、あるかもしれない。(笑)
論理的にはそういうことだ。

また、ここまで読んでも危険性の程度が理解できない人は、絶対に使わないでほしい。そもそもからして、専門家が、安全だと保障してくれるもの以外は使わない方がいい。
POICウォーターも歯科医で購入するべきだし、そもそも、POICウォーターの安全性を疑った方がいい。

結論

大量は有害、少量は有用。これに尽きる。高濃度、低濃度というべきか。

「次亜塩素酸ナトリウムは無害」も「次亜塩素酸ナトリウムは有害だから一切ダメ」もどちらも間違いということ。

高濃度摂取時には危険なのは明らかだが、現実として、次亜塩素酸ナトリウムは食品添加物として使用されているし、水道水にも添加されいるし、これを放出する加湿器も国内有名家電メーカーから販売されている。

食品衛生法には許容量の基準が無い。想像するに、次亜塩素酸ナトリウムが食品添加物に認められたのは(たしか)昭和30年代と古く、要はそれだけ利用され続け、安全性程度についても現場に知見が積み重なっていると思われる。大規模な健康被害問題も聞いたことがない。要は、割と安全な食品添加物といえるのかもしれない。

個人で使うなら、常識的な範囲で、ごく少量でということだろうか。
前記事のCleanMakerのレシピで作った電解次亜水の、次亜塩素酸ナトリウム濃度がわからないが、キッチンハイター原液から比べると、はるかに低濃度と思われる。有効塩素濃度と次亜塩素酸ナトリウムの関係式などあれば推定できるのだか。時間があったら調べてみよう。
※追記:有効塩素濃度と濃度の関係が判明したので末尾に追記した

しつこいようだが、私は法令の専門家でもなく、条文をすべて読んだわけではないので、見落としがあるかもしれない。正解は専門家に聞いてほしい。

また、前記事で紹介したCleanMakerが食品衛生法的にOKな商品かどうかは、私にはわからない。わからないが、私は自己責任で使う。

余談(根拠無きデマへの愚痴)

CleanMakerのAmazon商品レビューで、「次亜塩素酸ナトリウムだから有害で危険だから体に使っちゃいけない。なぜなら次亜塩素酸ナトリウムだから。」的な書き込みが、あるときから急に増えた。

Amazonの運営側もそれを重視しているらしく、その系のレビューが上位に来るようになった。「うがいに使っている」などという、フザけた私のレビューなどは、最後方に押しやられている。(笑)
これはどこから来たのだろうか?

一つのヒントを発見した。電解次亜水とは違う方式の、微酸性電解水生成器のメーカーHPで、「次亜塩素酸ナトリウムは危険」と謳っていた。(引用は避ける)
そして、根拠は書かれていなかったり、食品添加物として認められていないというウソが書かれているか。
Amazon商品レビューの該当コメントも同様で、これは次亜塩素酸水は安全だが次亜塩素酸ナトリウムは危険だ、的なものがまま見られた。メーカーのデマの受け売りだろうか。

(追記)次亜塩素酸ナトリウムの濃度と有効塩素濃度について

次亜塩素酸ナトリウム濃度と有効塩素濃度の関係は、結論から言うとうがい水としての利用においては同値と考えて問題なさそうだ。

以下のように有効塩素濃度との関係について調べた。

水道用次亜塩素酸ナトリウムの取り扱い等の手引き(Q&A)
公益社団法人 日本水道協会

有効塩素濃度が正確に測定できれば、比重などとの関係から塩素酸の状況を推測することは可能です(水道用次亜塩素酸ナトリウム 日本水道協会JWWA K120:2008 参照)

なるほど。でJWWA K120という規格の資料はどこにあるのか調べてみたら、同協会から700円程度で販売されていた。このpdf資料は目次までで寸止め。(笑)

一般的な物性の話なので、ネット上に転がっていないか探してみたら、これがあった。

株式会社タクミナ(精密ポンプ・流体制御機器の製造販売)
基礎講座:滅菌・殺菌 12-3.次亜塩素酸ナトリウムについて

株式会社タクミナさんには、こういった情報を公開していただいたことに感謝申し上げる。

比重
(20℃)
有効塩素濃度
(g/L)
次亜塩素酸ナトリウム
(wt.%)
1.05303.0
上記リンクから一部抜粋

20℃で、有効塩素濃度30g/Lで、3.0重量%。

ということは有効塩素濃度と重量%は、ほぼ同じ値を示すようだ。
(有効塩素濃度:30g/L=30/1000g=3%。水は温度で密度は多少変わるが、ここではざっくり分かればいいので1L=1000gとみなす)
「次亜塩素酸ナトリウムの濃度は有効塩素濃度を記すことになっている」などという記述もどこかで見かけていたのだが、これであればどっちみち気にすることはないようだ。

なので、前記事で作った電解次亜水うがい水は有効塩素濃度500ppmなので、次亜塩素酸ナトリウム濃度500ppmと言える。(1000000ppm=100%)
つまり、私のレシピの電解次亜水うがい水の次亜塩素酸ナトリウム濃度は0.05%くらい

キッチンハイターの原液の濃度や、安全データシートで記載されていた刺激性などの現れる濃度である5%程度と比べ、1/100程度ということになる。

ちなみに、飲用を想定する水道水に添加される次亜塩素酸ナトリウムはかなり厳しく、0.4mg/L以下(0.00004%くらい)とされているそうだから、これと比べれば1000倍の高濃度、ということにはなる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました